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専門家の仕事について [雑感]

自分が凡庸な研究者だからこそ思うのだと思うが、世間の「専門家」のアメリカ分析に非常に不満がある。

トランプ政権になり、分析がどんどんと反射神経と噂話の入手に偏っている。政権の特徴を反映して、短期的な見方ばかりを提示し、メディアにもそれが受けが良い。

オバマ政権のときも、分析手法としてそこまで斬新さはなかった。政権が流すメッセージ(文書なりリークなり演説なり)を一生懸命に読み、裏付けるためにDCや軍関係者との会合を大切にして、アメリカの方針を読み解く。つまらないといえばつまらないし、それが良いとは思っていなかったが、それでも分析はもう少し賞味期限があった。

トランプ政権の分析は正直、つまらないものばかりがでてくる。誰に会った。噂を聞いた。人事情報を早く入手した。だからどうなんだ、と思う。

分析者の役割は、どうにでも転ぶ今だからこそ、一歩引いた構造を見極めることだし、シナリオを考えることではないのか。

似たような話で、アメリカの中国政策が固まった、というのがある。

そういう言説をするDCの人間はいるが、それはそうであってほしいという思いとともに言っている。
しかし実際は、中国政策が従来のままではもう機能しないことを分かりつつも、また大目標として米国の優位を維持しなければならないことに合意しつつも、アプローチは多様であり、強硬論者に眉をひそめる人間は古い人間だけではなく、DCのいたるところにいる。アプローチが多様であれば、政策の出方は色々と変化してくる。表面的なところの下に隠れているところを見極めるのが、仕事だ。

きちんと情報収集を多角的にやっていれば、規範論と分析の違いは普通わかる。

ただ、そこが分からない日本の実務家は、アメリカの中国政策はこうだ、取引主義者のトランプ大統領だけをみては間違う、みんな一枚岩だ、とのたまう。

私に直接そのようなことを言ってくださった、ある省庁幹部には正直面食らった。

きっと出先機関と、高いお金を払ったコンサル的な人たちのレポートがあるのでしょうが、まずは自分で足を運んで、ネットワークを広げたらどうでしょうか、と。
または米中関係の構造的、歴史的な分析をもう少し読んでみたらどうでしょうか、と。

まあ、自制したが。

自分のしていることは学究なので、目の前の人間を喜ばせることにさして興味はない。クライアントではないのだから。本当に正しい分析は何なのか、何が長期的に意味のある、読んだ人間に価値ある分析なのか。

ただの雑感です。

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