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和解という知恵(2014) [スタンフォード日記]

廣田尚久『和解という知恵』(講談社現代新書,2014年)を読了。

こちらでは毎晩iPad Airで読書を楽しんでいます。KindleとStanford東アジア図書館で気楽な日本語の読書のために欲しいものはたいてい手に入ります。昨晩は話題の、この新書を読了。久しぶりにいい新書だと思いました。

筆者は超ベテランの弁護士。紛争解決について九州大などで教え、2冊著書を出されているので、エッセンスを詰められたのだと思います。そのため、非常に読みやすく、法律実務家の視点から、和解の意義を訴訟との比較で位置づけ、方法論を示し、法の流れに位置づけていると思います。(と思います、というのは、私は法学部教員ではあっても法律家の隣人?を長年近くつとめているだけなので自信がないのです。)紹介されているADR(裁判外紛争解決)は勤務先でも研究・教育対象として多くの教員が取り組んでいます。本書は最後に「付帯条件付き最終提案調停・仲裁」という筆者の方法を紹介して終わっています。

読後観:この本は学者にすごく面白い素材を山のように提供してくれています。一つ一つの主張をあれやこれやと吟味し、それぞれの分野の研究者が取り組むとますます成果が出てくるのではないでしょうか。

また、76になる著者の達観した人間観も伝わってきますし、様々なトラブルの実例からは人生勉強もできます。あー、こうやって人間同士、会社同士でトラブるのかと。そして解決には根気も想像力もいるのだと。

「少なくとも、その人が考えている正義にかなっていなければ、あるいは、全部がかなえられなくても、まずまずよかろうと思う程度にかなえられなくては、人は和解の握手をしないものなのです。(略)人が和解をするときには、その人が持っている規範に照らして、和解をするかどうか、どのような内容の和解をするか、などという判断をするのです。」(本書より)


「当事者は、時間の流れの中に身を置いており、その時間は途中できることはできません。(略)過去、現在、未来の歴史的な諸条件の中に、和解の鍵が存在しているのです」(本書より)


トラブルは私人間にも企業間、部族間、国家間にも生まれますが、紛争のコストを考えると多くの場合は衝突を避け、和解する方が利益が多いのでしょうね。人は社会で生活をしていればトラブルに必ず巻き込まれます。私も例外ではなく、悩んだこともあります。今後の人生にも通じるヒントをもらった気がしました。「変なことばっかり言いやがって、頭きた、訴えてやる、裁判所(や世間)はわかってくれる」という単純さだけでは社会を生きていけないのも事実で、その後の展望を開いてくれる解決こそ必要ですから。

多少法律用語はできてきますが、読みやすく、大学1年生でも読めます。

法曹・法律実務家・法学部教員の方で、もし読まれたかたがいれば、是非感想を教えてください。

【↓最近、美味しんぼはいきなり話題になりましたが、僕にとっては雄山と士郎の和解の方がはるかに衝撃でした。】
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