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慌ただしい学期始まり [スタンフォード日記]

今日は学部と修士の学生の「東アジアの国際関係」の授業で,100分ほどゲスト講義でしゃべり倒しました。久しぶりの講義は疲れます(((・・;) 来年度(から)はこのテーマ(東アジアの安全保障秩序と日本のこの60年)で日本内外で英語講義を頼まれているので、よい準備にもなりましたし,今日の内容は今書いている論文の要素も盛り込みました。質問のレベルの高いこと!

昨日は博論の審査にも入ってもらった田中先生(JICA理事長)が当研究所で講演。夕食では、香港やアフリカの現状分析に加え,フランシス・フクヤマ,アセモグル&ロビンソンを下敷きに,成長と政治秩序の関係などについてたっぷりと議論することになりました。(゜o゜;) 

これに加えて原稿や校正,出張の準備などなどで、学期始まりのイベント続きもあり、バタバタだった3週間も終わりました。ゴルフのレッスンも無事に始まりました。笑

そして明日からバンクーバーにシャケを釣りに行ってきます!

【ちなみに、政治学の授業の教室はこのQuadの建物の,タワーに一番近い部分の3階でした。窓がないので圧迫感がちょっと。。。(((・・;)】
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備忘録:「雨傘革命」 [スタンフォード日記]

(更新中) 自分の備忘録としても、報道や解説から気になる素材と写真を以下に、更新していきます。

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Wall Street Journal 10月6日発表のビデオ素材


アメリカ政府の対応として、
香港総領事館声明(9/29)
ケリー声明(10/1)
オバマ・S.ライス大統領補佐官と王毅会談のメモ(10/1)

これらの政府対応にも色々と批判はありますが、事態が緊迫してくると穏健派と積極派というか、アメリカの対応をめぐり意見が割れたと思います。
Washington Time (保守系)
2人の専門家を引用し、アメリカの干渉への消極論を展開。その理由は中国政府が唱えている、香港のデモはアメリカ、欧米の策略説を裏付けてしまうからというもの。オバマと習近平は今秋に2回の首脳会談があり(APECおよびG-20)、香港問題の米中関係への大きな影響を避けたいとの意図も。

NYT: 人権団体はアメリカ政府の対応を手ぬるいと批判。またこの記事は、オバマによる王毅・ライス会談への立ち寄りも香港への言及は後回しであり、米中首脳会談への配慮が強いと指摘。(10/3)

また、米・香港関係には法的枠組みが存在しています。

Heritage: US-Hong Kong Policy Act 1992(1992年香港政策法)を指摘。7月段階での記事であることに注意。
米国務省による説明(8月段階)
Hong Kong Policy Act 1992原文(Sec.2 (5)&(6))
1992年香港政策法を含めた、アメリカの香港返還期の対応を整理した論文 Kerry Dumbaugh, The U.S. Role During and After Hong Kong's Transition, 18 J. Int'l L. 333 (2014).

連邦議会に設置されているCongressional-Executive Commission on China(上下両院を代表する議員によって構成される、中国の人権状況を監視する公的機関)の両院の委員長は10月1日に声明を出しており、そのプレスリリースには以下の記述もあります。1992年香港政策法の強化のための立法を計画していること、また10月10日に発表される毎年の報告書に香港に関する記述、提言を加えることが記されています。

Senator Brown and Congressman Smith plan to introduce bipartisan legislation to amend the U.S.-Hong Kong Policy Act of 1992 to strengthen U.S. monitoring of developments in Hong Kong by resuming the reporting requirements in the Act. The Commission closely monitors Hong Kong and reports on developments throughout the year and in its annual report, which will be released by October 10 and which will include recommendations for legislative and executive action on Hong Kong.


さらに、3名の歴代香港総領事である、3名のアメリカ大使は連名で香港行政長官CYにあてた公開書簡(10/4)を出しています。その内容はデモと当局の対話をもとめ、香港基本法にある内容を実現するロードマップを示すこと、新しい提案がなければ一国二制度のもとにある香港の特別な地位が崩れると捉えることが記されています。しかし、Boucher大使はほぼ同時期の別インタビューで、北京政府が行政長官選挙の方法について妥協案を示すことについて極めて否定的な見通しを明らかにしています。

NYT: 香港情勢をみつめるウイグル、台湾について(10/5)
Most analysts agree that events in Hong Kong have already done significant damage to one of China’s so-called core interests: its six-decade effort to bring about reunification with Taiwan.(香港での出来事が中国の核心的利益のひとつ、台湾の統一という60年がかりの試みに大きな痛手となっていると、専門家の見解は一致している。)


また、重要である一方であまり注目されていないことは、学生運動/占中運動のリーダーにクリスチャンが多いことでしょう(当局幹部にももちろんいますが)。なお香港の人口720万に占める割合は12%とのこと。
キング牧師やアパルトヘイトとの闘いだけでなく、台湾や韓国でも民主主義をもとめる運動の中でキリスト教会が実は活躍していたことは、分析のために忘れてはいけない点です。

以下は、各研究機関からのコメンタリーです。
Stanford:ラリー・ダイヤモンドによる解説 中国の姿勢、また政治改革の先行きに批判的
Brookings: リチャード・ブッシュによる解説とオピニオン(続々更新)
外交問題評議会/Fortune誌:エリザベス・エコノミーによるオピニオン(出来は正直いまいち)
CSIS: マイケル・グリーンによるビデオインタビュー(習近平の政治姿勢は強硬、ウイグルなどの対応でも柔軟性を欠く。香港では過去と異なり最高指導者の面子を保ったひき方が難しい。米政府の声明を支持、G7で一致して世界の民主主義を求める声に応えるべき。)

英Economist:(10/4号)
抑圧は一時的な解決に過ぎず、大陸への波及も想定される。香港で、デモによらない民意の表出とそれへの対応のやり方を模索すべきと論じる。
英Economist: 中国政府による情報統制
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New York Times: 香港系教授によるオピニオン(9/29)

日経:香港とファイアチャットのまとめ
ユーザーの急増を受け、オープンガーデンは機能の拡充を急いでいる。たとえば、1日に追加した「本人認証」機能。香港ではデモ隊になりすました当局者などによる誤った情報発信が増えているためだという。要望の多い「プライベートメッセージ」機能の開発にも取り組んでいる。ファイアチャットは、ユーザーがテーマごとに開設する「チャットルーム」に入ると、そこで発信するメッセージの受け手は現状では選べないためだ。最終的にはメッセージを暗号化し、当局がメッセージの中身を見ることができないようにする技術の開発も進めている。

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職場でのシンポジウム [スタンフォード日記]

職場のアジア太平洋研究センター(S-APARC)で、日本の安全保障や集団的自衛権に関するシンポを行いました。

70数名の参加を頂いて、1時間半のランチタイムでのシンポは結構盛り上がったと思います。

星教授(日本プログラム・ディレクター)の司会のもと、同僚であり、日本にも精通しているジャーナリスト出身のダン・シュナイダー副所長(研究担当)と2人で冒頭に20分ずつ話し、そのあと質疑というスタイルを取りました。

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ダンは、知日派でありながら歴史認識問題については日本に厳しい姿勢で知られています。朝日新聞など日本の全国紙でコメントがでることもありますが、アメリカではニューヨークタイムズやフォーリンアフェアーズにもコメントや記事を書く、よく知られた方です。

では、今回の閣議決定や最近の安保政策に反対かというと、そんなことは全くなく、今回のシンポでも冒頭、東アジアの安全保障環境の変化、アメリカの対日期待から日米同盟の変化を位置づける、そのうえで、日本の防衛政策の問題点(調達のあり方など)、周辺諸国との外交(あっさりと)を最後に付け加えていました。

私はそれを受けて、今回の閣議決定の内容とそれへの法学者からの批判とそれへの批判、日本の政治状況、今後の見通し(自衛隊の行動空間はどこまで本当に広がるのか:政治的な意味で)、最後に日本の軍国主義(ミリタリズム)復活という議論への反論をして、冒頭発言を終えました。

ダンとは5月から7月まで、オフィスがそれこそ歩いて5秒という距離なので、毎日新しい情報が入ってくる、この件について話していました。今回のシンポで、多くの論点をカバーできたのもそのおかげかな、と思っています。

全体の半分の時間が質疑にあてられたのですが、色々なコメント、質問がでて、大変面白いものでした。

最前列の関係者席には、センター同僚が陣取るのですが、アマーコスト元駐日大使、フィンガー元NIC議長・国家情報副長官が最初に素晴らしい補足コメント、また当然の疑問をぶつけてくれました。

今回の閣議決定以後、中韓をのぞく地域諸国がそれを理解しているのは歴史的なことである一方、日本が急速に悪化する安全保障環境にも関わらず国内での法律論議に時間をかけているのはなかなか理解しがたい。

このような感想は多くの方が抱くところなのだと、常々思います。

会場からは質問がつづき、インドとの安全保障協力の今後(日本の対外政策が変化している以上当然の質問だと思います)、国際任務のための自衛隊派遣の今後という見通しに関する質問、また、今回の変化が実態(またはダンと私の説明)と異なって韓国や中国で報道、議論されているのはなぜか、というまっとうな質問、

そして(これは極めて本質を突いているのですが)日本の閣議決定、および最近の安保政策の変化が「台湾」に関してもつ含意についての質問。

最後の質問は、おそらく質問した方が思っている以上に深いんですよね。

私の答えをかいつまんで言うと、これまでの枠組みとまったく異なるものになるだろう、ということです。日台の政治関係が極めて良好なだけでなく、戦略的な意義がようやく見直されてきた兆しがあり、表だってそこまで議論するものではないものの、日米が考えている射程はこれまでと本質的に異なるのだと。

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というわけで、一年間の滞在のちょうど折り返し地点を回りました。

振り返ると、最初の一ヶ月は生活の立ち上げに四苦八苦しながら、書けたものは新聞のオピニオンや書評程度でした。5月からはインプットに相当に専念でき、国際会議の準備や短い書き物数本をしながら、とても頭の整理ができました。8月は、キャンパスに誰もいないことをいいことに、ひたすら読みました。9月は前半を出張と旅行で費やしましたが、2つのプロジェクトを無事にすませ、そしてこのシンポもおえる事ができました。

ついに、折り返し。あとはとにかく本の原稿(新しい書き下ろしチャプターの準備に今は専念しています)と、別テーマの論文1本に全力を投入するのみです。

細かい仕事は効率的にすませ、大きな目標に向かって研究を進めたいと思います。


新学期、イベントは続く:フランシス・フクヤマの新著出版を記念して、ラリー・ダイヤモンドとの対談。
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東アジア図書館、移設を記念してのイベント
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立派になった閲覧スペース
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和太鼓部の演奏
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空飛ぶタイヤ [スタンフォード日記]

この2週間、友人からたまたまもらった、池井戸潤さんの銀行総務特命と不祥事(=花咲舞の原作)という文庫本で勢いがつき、シャイロックの子供たち、そして空飛ぶタイヤ上・下と、夜な夜なKindle読書に励みました。空飛ぶタイヤのドラマも入手して、300分を一気に観ました。すべて今更、ですが。

http://www.wowow.co.jp/dramaw/taiya/index2.html

空飛ぶタイヤの小説とドラマ版。Amazonのレビューだとドラマの方がよいと書いている方もいます。たしかにドラマは演技力のある役者さんばかりで、とても面白いのですが、原作を読んでいると脚本の構成に少し不満が残り、そのずれが少しリアリティを失わせているところもあります。

とくに沢田と杉本の心理については、原作の方が良いと思います。

また、榎本はもっと汗臭い、編集部に週6日泊まり込んで、シャツ匂いますけど何か、みたいなジャーナリストが相応しい。水野美紀は好きな女優ですが、、記者っぽくない。

予算の都合でしょうか、PTAの部分も総会がなく最後の盛り上がりに欠けるし、はるな(りそな?)銀行とのやりとりや、ホープ銀行調査役とホープ自動車銀行担当の熾烈なバトルもありませんでした。井関フィアンセをドラマのために設けたことも微妙(井関には純粋に下っ端調査役としてもがいて欲しかった)。

原作のもっていたリアリティが、やはり万人向けのドラマということで脚本上、薄められている印象はあります。配役は、あまりにはまり役をもってきているため、逆にうさんくさいところもあります。

会社/組織の論理がそれぞれの立場でみえてくることがこの本の良いところだと思います。そして、それぞれがプライド、そして生き残りにかけてもがく、その心理描写が重要な作品なので、そもそも文章の力が重要なことも事実でしょう。緊迫感も、原作がより上手く表現しています。

それでも、ドラマでは赤松社長(仲村トオル)が素晴らしい。完全に趣味が別れる気がするけど、沢田嫁(本上まなみ)のああいう感じははまっててよかった。

新学期、はじまる。 [スタンフォード日記]

スタンフォードにも遅い新学期がやってきました!

今日は朝9時から夜8時半まで、3つのクラスをウィンドウショッピング。先学期のゼミ形式と異なり、1人の話を2時間とか連続で聞くと頭痛はするわ、疲れるわで、自分の学生の苦労を少しだけ分かったような。

聴講してみたのは、、、

1)State of Union 2014という、アメリカ政治の今を7回の連続シンポで考える、300名以上参加の全学開設科目。(90分)
https://continuingstudies.stanford.edu/courses/detail/20141_POL-52
(アメリカ政治に関心のある方は、上にあるゲスト一覧を見ただけでびっくりすると思います。今日のゲスト4名との対話も、ワシントンを考える上での主要論点が見事に網羅されました。2年前も開設された、選挙Yearの名物のようです。)

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2)Intelligence and National Security インテリジェンス(情報)をテーマに、情報機関トップを歴任したT. Fingar博士が行うレクチャー(週2回、それぞれ110分)同僚と言えば同僚なのですが、かなりレクチャーは整理されている内容で、見直しました笑

3)Introduction to International Politics M. Tomz教授による国際政治の入門科目。(週3回50分のレクチャー、加えて50分のTAセッション(小クラスでの討論))

面白いのは1)は講義の内容が48時間以内にiTunesのPodcast、YoutubeのStanfordチャンネルに全面公開され、2)も参加者の30%は自宅やオフィスからライブ参加(または録画もみれる)する形式をとること。カメラだらけです、教室。

3)は古典的な大規模レクチャーですが、教え方が上手い[exclamation×2]。社会科学の基本的なアプローチを教えつつ、理論とそれへの批判を丁寧に、それも学生に考えさせながら。教育法の勉強になります。

こんなの全部出ていたら自分の研究ができなくなるのですが、1)と3)は時々顔を出す程度に、2)を中心に少し学生気分で勉強したいと思います。

2)のインテリジェンスに関心のある方もいるとおもいますが、指定教科書は以下のような感じです。これに30ほどの追加文献(論文と一次資料)がコースワークというシステムで配布されます。どれだけリーディングが多いのだ、とわめきたくもなりますが、すべて完璧に読むことを期待されているのではなく、興味関心の広がりに沿って読んで欲しい文献が多いようです。

Lowenthalは邦訳があるもので、自分の講義でも1回の半分50分程度、インテリジェンスを扱うため昔数冊読んだ中にありました。今学期しっかり勉強して、数回講義できる程度にはなりたいものです。

1 Richard K. Betts. Enemies of Intelligence: Knowledge and Power in American National Security (New York: Columbia University Press, 2007)
2 Thomas Fingar. Reducing Uncertainty: Intelligence Analysis and National Security (Stanford: Stanford University Press, 2011)
3 Roger Z. George and James B. Bruce, Editors, Analyzing Intelligence: National Security Practitioners’ Perspectives, Second Edition (Washington, DC: Georgetown University Press, 2014)
4 Roger Z. George and Harvey Rishikof. The National Security Enterprise: Navigating the Labyrinth (Washington, DC: Georgetown University Press, 2011)
5 Richard H. Immerman, The Hidden Hand: A Brief History of the CIA (Oxford: John Wiley, 2014)
6 Robert Jervis. Why Intelligence Fails: Lessons from the Iranian Revolution and the Iraq War (Ithaca: Cornell University Press, 2010)
7 Mark Lowenthal. Intelligence: From Secrets to Policy, Fifth Edition (Washington: CQ Press, 2012)

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平和主義と安全保障の交錯 [スタンフォード日記]

日弁連の雑誌『自由と正義』の最新号に、7月の閣議決定に絡めて小文を掲載して頂きました。

今回は全国3万5000人の弁護士を読者として想定した雑誌であり、また前に長谷部恭男先生、後ろに青井美帆先生と拙文が憲法学の諸先輩に挟まれていることもあり、政治学者として異なる議論枠組みを提示することを心がけました。法に慣れ親しんでいる方に、僭越ですが「頭の体操」をしてもらうことを狙っています。

そのため各論の細かい話をしているわけではありません。読み返すと議論も荒いです。安保をやっている方には、もっと細かく説明せよとお叱りを受けるでしょう。しかし、上記の目的をご理解ください。あくまでも議論を進めていった結果として集団的自衛権やPKOについて触れていくというスタイルです。

議論の枠組みとしては自分の政治学者としての少ないキャリアのなかで考えてきたことを凝縮して書きました。7月1日のブログの拡大版と言えるかも知れませんが、かなり時間をかけました。

政治学者の領分を越えて法律論に踏み込んだ発言をする方もいますが、拙稿はかなり意識的に政治学の視点にこだわったつもりです。法学部で長年トレーニングを受けているとは言え、あくまで政治学が専門なので。憲法学を専門とする方も逆に、国際政治の領域に不必要に踏み込んでいるのを散見します。線を引く感じで、今回の原稿は書いています。

憲法学の上述の両先生は「護憲派」の代表格、若手の木村草太先生を加えて今回の閣議決定に憲法学としてひとつの論陣を張っていると思います。同じ東大法学部研究室の出身者として、どこかのゼミで議論をしている気持ちで書いたところもあります。(南原先生、苅部先生が登場するのも、そのあたりを意識しています。)政策の賛否に入れ込むのではなく、アカデミズムとして必要な議論を立てて、学者としての責任で公にしているつもりです。

蛇足はこのあたりで。是非、今回の特集の長谷部先生の原稿や木村先生の原稿(たとえば朝日のJournalism所収)とあわせて読んで頂ければ幸いです。

「平和主義と安全保障の交錯」『自由と正義』(日本弁護士連合会)2014年Vol65, No.9, 16-21頁。
http://www.jcie.org/japan/j/pdf/others/kiji/2014/201409jiyutoseigi.pdf

ホテルオークラ [スタンフォード日記]

オークラがなくなる。[exclamation×2]

普通の人にはそれだけの話なのだと思います。オリンピックの前に完成するんだ。新しくなっていいじゃない。値段が上がらないといいね。などなど。

旅人に愛されてきたホテルです。海外の人にも多くの思い出があるでしょうね。ニューヨーク・タイムズにでるくらいですから。
"Editorial: Farewell to the Old Okura" The New York Times, 15th of August, 2014.
しかし、このホテルのロビーや宴会場、会議場、レストランを動き回ることで、大学院生から社会人生活を始めた私は、このニュースを聞いて、ショックと寂しさで一杯になりました。(オークラのスタッフではありません、念のため。)

別館のロビーをどれだけ走り回ったか。どれだけの会議やパーティーに裏方で関わったのか。

私のかつての職場でプログラムを回していたものにとって、ここはまさに現場でした。創業以来の伝統です。ここでは書けないことばかりですが、全身が震えるような緊張感を味わったことも、今思い出すといつでも笑えるようなこともありました。

会議があるときは毎日朝から晩まで通い続けるわけですよ。神谷町からトコトコと。

今でも昨日のことのように覚えているのは、オーキッドバーでボスと初めて二人で飲んだとき、とびきりの海外VIPの世話で1週間過ごしたとき、そしてボスの叙勲の内祝いをスターライトで職場全員でしたときでしょうか。節目節目にオークラあり、です。

朝食会も多かった。8時の朝食会(準備は前夜に終わっています)に7時半前に着いたら、7時には来ているボスに、「寝坊したのか」と言われたり。。

あまりに偉い人ばかりとボスが桃花林の中華円卓のランチを食べている、その後ろで待機していて腹ぺこで職場に戻ったら、ボスの指示で何でも食べさせてやれとすべての(ちょっと高めの)店屋物のメニューが置いてあったり。

書いているだけで、涙がでてきました。[もうやだ~(悲しい顔)]ボスであり、人生の大恩人が天に召されてから、もう2年以上経ちました。

ここで会議の準備をして、そして聞いて、また時には参加したり、発表することもあって。その緊張感の中で、少しずつ成長できたと思います。

もちろん帝国、オータニ、ANA、最近ではキャピトルや横浜のホテルにも、それぞれに思い出はありますが、オークラは別格でした。頻度も、行われる会議の緊張感も、そして何とも言えない、重厚さも。(取り壊された赤プリは、ちょっと懐かしいですね。)

建物だけではなく、すべてが完璧なホテルスタッフの皆さんのおかげなのだと思います。バンケットも、車寄せも、料理も、レセプションも、客室も、どれもがオークラだけは欠点がないんですよね。たこ糸をつかってバンケットの机を夜中に調整してくれているところに立ち会う度に、大切な方同士を引き合わせる小会議室の前で打ち合わせをする度に、いつも安心感がありました。頼っているなぁ、頼れるなぁと。

あと1年。そのほとんどはアメリカに住んでいるし、どこまでいけるか分からないのですが、僕にとって大切な空間が失われる前に何回でも訪れたいものです。

Fear the Tree! [スタンフォード日記]

こんにちは。最近、今年からスタンフォードの大学院で学びます!客員フェローで来ました!、という方に多くお会いしています。

そのたびに思うのです。

みんな、いつ、スタンフォードのシンボルの存在に気付くのだろう、って。

いや、スタンフォードといえば、Hooverタワーじゃないか!
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そう思ったあなた!お目が高い!

いや、スタンフォードといえば、ゴルフ場!よくご存じで!いや、大きなヤシの木が延々と続く、正門からのPalm Drive!そうそう。

しかし、あれですよ。

アメリカの大学と言えば、大学スポーツ。スタンフォードもご多分に漏れず、なかなかの強豪です。

で、スポーツといえば応援。応援と言えばマスコット。

たとえば日本でも多くの大学がマスコットを持っていますよね。私の勤務先も、なぜか「平和のシンボル」という、かもめです。
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アメリカでも同じです。結構かわいいやつがそろっています。
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そうかー。ま、近所のライバル、UCバークレーもかわいいベアだし、
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さぞかし、世界のイノベーションを牽引するシリコンバレーに君臨し、いまやハーバードを東海岸のスタンフォードとも言わしめる、その名声に相応しいマスコットに違いない。

・・・

・・・

これです。
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よく見えないですか。
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?まだわからないですか。ズームでどうだ!
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信じられないって。なら動いている彼(彼女?)をみせましょう!


最後、ツリー捨ててますね、着ぐるみ士。。

しかし、いずれにせよ、世界を代表しているはずの、西海岸の雄、スタンフォードの非公式マスコットはこのオバQツリーなのです。

公式マスコットはないので、基本的に彼(いや、繰り返しですが彼女かも知れないのですが)しかいないのです。汗

どうしてこうなったのか。こうなってしまったのか。

この1週間、あまりに暇だったので論文執筆の合間を縫って、せっせとリサーチを進めた結果、

まあ要するに、昔はチーム名も絵柄もインディアンだったのだけど、それが差別的だと批判され、カーディナルズにチーム名を変更、マスコットはマンホール?、フレンチフライ?など優れたアイディアが競合してしまったために、

学長が「もういやだー、公式には決めない!」と宣言するにいたり、

な・ぜ・か・ツリーが非公式にですが、残ったそうです。

ちなみに、非公式なので、コスチュームは毎年変わっているようですが、生協では定番?のこの絵柄でぬいぐるみが置いてあります。お土産にぜひどうぞ!そのうち愛着が沸くかも!?

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・・・せっかくの新しい母校がぁ〜。とお嘆きの方は、次のスライドをみて、
ほかもたいしたことなーい、と思ったり、
http://www.si.com/more-sports/photos/2013/08/12/best-college-mascots#1

トラブルで80年使ったロゴが使用禁止になり、新しく募集したらこんなのしか集まらなかった僕の母校イリノイ大学をみるなりして、
https://www.facebook.com/CampusSpiritRevival/photos_stream

元気になってください!

世界の女王 [スタンフォード日記]

今日はスタンフォード大学で開催されている、女子テニス、バンク・オブ・ザ・ウェスト・クラッシックの決勝を見に行きました。

女王セリーナ・ウィリアムズ優勝。すさまじい勝負強さをみせていました。第1セット、1-5から5−5、6−6ともちなおして逆転、そしてたたみかけるような第2セット。会場が小さいこともあり、シューズの軋む音、ラケットとボールが出会う音、そして本人たちの掛け声と、とても印象的なゲームでした。

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家から5分、オフィスから2分程度のテニスコートに世界ランキング1位が来るという、なんとも贅沢な体験でした!1981年生まれで、世界のトップに昨年返り咲いた女王は、インタビューでも自分を支えるチームに、ひとりひとりの名前を挙げながら感謝していました。スピーチも含め、とても謙虚なことが印象的でした。

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準優勝のAngelique Kerberも、とても良いプレーをしていました。会場の外で変える彼女をキャッチしたのがこの写真です。
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出版:批判されるオバマ外交、バランス感覚あるオーストラリア外交 [スタンフォード日記]

この1ヶ月半のあいだ、ベルリンでの論文発表のほかに、数本の作業を中心に研究を進めていました。そのうち2本は今月末頃に出版される予定です。(PDFリンクは、準備ができ次第貼っておきます。)

「批判される『オバマ・ドクトリン』と『普通の国への憧れ』」『東亜』2014年8月号。
「オーストラリア外交のバランス感覚:米豪同盟と対中関係の調整」『改革者』2014年8月号。


前者では、ウェストポイント(陸軍士官学校)演説前後にみられた、オバマ外交への辛辣な批判を取り上げています。演説そのものだけでなく、今アメリカで巻き起こっている「抑制」方針への批判の有識者の大合唱を、マイケル・イグナティエフ、ロバート・ケーガンの論考を通じて紹介しました。ただ、いくら批判されようとも、オバマ政権の内向き姿勢、外交・安保の抑制方針は変わらないと思います。ヒラリーへの期待を口にする方も多いですが、レトリックはもちろん変わってくるとしても、慎重な力の行使、同盟国やパートナーへの負担シフトの流れはそう簡単に変わらないでしょう。

後者は、オーストラリアへの首相訪問もありタイムリーですが、2ヶ月前より用意してきた原稿で、労働党政権から保守連合政権に代わったオーストラリアが、アメリカとの同盟を基軸とし、また日豪関係を発展してきたこと、しかし同時に中国との外交にもかなりの配慮をみせていることを解説しています。日本では日豪万歳、対中封じ込め?のような議論がありますが、オーストラリアは第一の貿易相手中国に、たしかに保守政権は少しきつめとはいえ、存分に配慮しています。6000字に満たない原稿ですので、そのあたりの基本構図を解説しています。


これらより時間がかかった原稿は、以下の2本です。「書評:Evelyn Goh, The Struggle for Order: Hegemony, Hierarchy, and Transition in Post-Cold War East Asia」を『アジア研究』に、また「平和主義と安全保障の交錯」を『自由と正義』に入稿しました。

後者はまだまだ校正の段階でブラッシュアップしたいと思っていますが、お読みいただければ、私がなぜ今回の閣議決定に批判的なのか、しかし同時に集団的自衛権そのもの、また武力行使の一体化原則の修正(さらには廃止)は認められるべきと考えているのか、おわかり頂けると思います。(私の考え方は最初に論文を出し始めた2006年から、ぶれていないと思います。)

自分のために書いているわけでは勿論無く、筋道を立てて安全保障と平和主義の問題を読者に考えて欲しいと願い、原稿をまとめました。

この夏には、東アジアの安全保障秩序構想に関する論文、またカーター政権による対中国交正常化の論文に本格的に着手する予定です。ご存じの通り、私の研究の本丸です。

いったいおまえの専門は何なのか、と思われるかも知れませんが、
1.アメリカと中国・台湾(とくに冷戦期)
2.アジア太平洋の安全保障アーキテクチャ(平たく言うと、構造式)
3.戦後日本の外交・安全保障政策

です。1が博士論文で扱ったもの(単著出版がまだなので、大きく引きずっています)、2が博士論文後の中核テーマです。両方とも米中関係が大きな割合を占めていますが、2ではオーストラリアや東南アジアも含めて、色々と調査しています。時代的には2は1の延長線上でもあり、1の単著をまとめたら、自然に2をまとめにかかると思います。

アメリカの東アジア「戦略」(単なる外交ではなく)や米中関係を延々と研究している研究者は実は少ないので、ニッチ市場だなと思っていたりします。流行の文書を読んでいます程度の新規参入者も少なくないのですが、歴史からしっかりと学び、また視野の広い分析ができるように研鑽を重ねています。

なお、3は1,2の研究成果を活かしつつ、冷戦後を中心に少しずつ論文を書いてきました。純粋なアカデミズムとは少し離れて、広い意味で、社会との対話を意識して書いています。


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さて、最近は毎日歩きすぎて、松○しげるか、というくらいに日焼けしてしまいました。[晴れ]

そろそろギアをあげて、研究に邁進したいと思っています。

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